偽装恋人などごめんです!
「……やっぱり俺はロリコンじゃない」
「は?」
「今までの野乃にこんなに欲情したことない。今の野乃だから……」
色気のある顔でそんなこと言われても、困ります。
流される前に、さっさと逃げなきゃ。
私は彼の頭を掴んで力いっぱい押し返す。
「今日は駄目です。そんなムードのない。お食事に行くんでしょ?」
「まだ時間がある」
「駄目だってば。ピンクのワンピ汚しちゃったし、服も考えないと」
「だったら買いに行こう。今度は野乃が気に入る服を」
「無駄遣いは駄目ですよ。普段の仕事にも着まわせるようなのを自分で買います」
「いいじゃん。買わせてよ。男が服を買うのは、脱がせたいときって言うでしょ」
「……何言ってんですか」
今度は変態疑惑が勃発だよ。
そこで、佑さんのお腹が大きな音を立てた。
「……お腹空いたんですか?」
「そういやお昼食べてないよね。外で食う?」
「いいえ。中途半端な時間だし、朝炊いたご飯が残っているので」
そう言って私は立ち上がる。
作ったのは、八歳のあの日のリベンジおにぎりだ。
「もう失敗しないですからね」
「うまいよ」
一口食べた彼は、私の口にもおにぎりを突っ込む。
あの日みたいにふたりで食べたひとつのおにぎりは、ちゃんとしょっぱくて。
だけどとびきり甘い気分にさせてくれた。
【Fin.】