偽装恋人などごめんです!

こんな風に佑さんに振り回されることになったのは、ひと月前の再会のせいだ。

その日はお姉ちゃんの結婚式。
式が終わって、親族中心の披露宴が終わって、最後に親しい人を招いての二次会をした。
その二次会で、私は彼に再会したのだ。

「あれ? 佑さんもよばれてたんですか?」

「野乃ちゃん? 久しぶりだね。うわ、見違えたね」

佑さんの実家と、私の実家は隣同士だった。隣といっても、お屋敷と小さな一軒家という超のつく格差があるわけだけど。回覧板持って行ったりと多少なり交流があったせいか、佑さんは私達姉妹とそれなりに仲良くしてくれていた。

名門私立に通う佑さんとは学校も別だったけれど、彼は町内会活動には参加していて、大きな休みのときには結構顔を合わせていた。私とは直接のかかわりはなかったけれど、お姉ちゃんに連れられてラジオ体操に行くと、最年少の私を、最年長の彼がよく面倒を見てくれたのだ。

私も、単純だったもんだから優しい人には簡単に懐いた。
隣だったことでなんとなく家族交流もあり、彼が中学生になっても高校生になっても、道端で会えば話すくらいの関係をずっと続けてきたのだ。

たぶん、お姉ちゃんと佑さんは付き合っていた期間があるのだと思う。
一時期、彼はよく家に来てお姉ちゃんと話していたから。

最後に会ったのは、三年くらい前だったかな。
そのころ、お姉ちゃんが転勤で地元に戻って来ていて、実家から通ってた。
佑さんも家を出て一人暮らしをしていたはずだけど、なぜか何度かお姉ちゃんを迎えに来ていたっけ。
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