偽装恋人などごめんです!
そこで、拍手がワーッと鳴った。
主役の新郎新婦の登場だ。
私はあとでね、と佑さんにアイコンタクトを取って、正面を見つめた。
入ってくるのは、お姉ちゃんと今日から私のお義兄さんになる啓太さんだ。
お姉ちゃんはパールピンクのワンピースにレースのボレロを重ね着している。相変わらず清楚なお嬢様ファッションが似合う人だ。啓太さんなんかべた惚れだもんなぁ。デレデレしちゃって……ってあれ?
ここでふと、疑問が沸き上がる。
お姉ちゃんがこの結婚の報告するとき、彼とのお付き合いは五年になるのだと言っていた。途中遠距離期間があったり、紆余曲折があったというけど。
そういえば、佑さんとふたりで出かけていたのは、三年前だったよね。あのとき、啓太さんとはどうなってたんだろう?
遠距離中に二股? いやーお姉ちゃんがそんなことできるなんて信じたくないっ。
佑さんが浮気相手なんだとしたら、この会に呼ぶのは相当神経太いよ!
待って、私のお姉ちゃんへのイメージがどんどん崩れていくんですけど。
さすがに幸せそうな姉に冷たい視線を送る気にはならず、隣に座っている佑さんに、目を細めて視線を送る。
「なんだよ」
「私、お姉ちゃんと佑さんって付き合ってるんだと思ってました。昔、よく一緒に出掛けてたし」
「ああ……。あれはまあ、なんというか契約みたいなもんだったからねぇ」
「契約?」
何を言ってるんだ? と見上げていると、佑さんはまるで品定めでもするように、まじまじと私を見た。
「……野乃ちゃん、いくつになったんだっけ」
「私? 二十三です」
「そうか。そうだよね。もう大人だよね」
「そうですね。法的には大人です」