偽装恋人などごめんです!



結局、頷いてしまった私は、一週間後である本日、親睦会とやらへ連れていかれるらしい。
私の生返事に不安だったのか、佑さんは朝から私のアパートにやってきた。

「なんですか、佑さん。ちゃんと約束の時間に行きますよ」

「逃げるかと思って」

「佑さんと一緒にしないでください」

そこまでヘタレじゃないよ、私は。
まだTシャツにジーパンという姿のときに部屋にこられても困るんだけど。

「まあそう言わないで。野乃をドレスアップさせなきゃならないだろ。おいで」

「ドレスアップ?」

服や宝石ならもらいましたが。

「化粧して髪を整えて。ほら、時間が足りないくらいだろ?」

「え? 誰が?」

「野乃が。今日は最高に綺麗にしていこう」

満面の笑顔の佑さん。
そ、そこまでして見合いをめちゃくちゃにしたいの?
私を大人の女に変身させる気?

ここまで行くと、相手の女性が気の毒になってくる。
佑さんがさぁ、ちゃんとお断りするだけでいい話じゃない。
他に女連れてきて、『この人と付き合ってます』なんて目の前で言われたら、たとえ佑さんに好意が無くてもショックじゃないかな。断るなら断るで女性を傷つけない断り方をしてほしいもんだ。


「佑さん、あの……」

「今更断るとかなしだよ。さあ、行こう。野乃」

「こういうときだけ強引になるのやめてくださいよ。ちょ、待って。鞄……」

「何も持たなくていいよ。俺が上げた一式はこれだな? これだけあれば十分だ」

片腕にまだ封さえ開けていなかった袋を抱え上げ、外へと連れ出された。
外で待つのは高級車。

「車で来たんですか?」

「この大荷物持って歩くわけないだろ」

変なところは強引なんだから。全くもって訳が分からない。
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