偽装恋人などごめんです!


着いたところは美容院。
予約を入れてあったらしく、そこそこ混んでいたのにすぐに案内された。

「可愛らしいお嬢さんですね。河東谷さま」

「服はこれなんだ。合うように髪もメイクも頼む」

この美容室にはエステティシャンもいるらしく、たっぷり二時間かけて肌を磨かれ、髪を整えられ、化粧を施され……佑さんが選んだというワンピーススーツに着替えさせられた。
このパールピンクの色、どこかで見たな。お姉ちゃんが二次会のときに着ていたワンピと同じ色じゃん。
いわゆる清楚系の服装。華美過ぎない、清潔感のあるお化粧。
おじさん世代から好かれそうなお嬢様に変身させられた。まるで私とは正反対。

「あの、佑さんは」

「もうじきいらっしゃると思いますよ」

靴も履いてきたペタンコ靴とは違い、ベージュのヒールだ。
うわこれ、まともに歩けるかな。

「お綺麗ですよ」

「……はあ」

凄いのは、美容師さんの腕ですよ。

綺麗になったのは嬉しいけど、なんだかおもしろくない。
佑さんが望んでいるのは、こういう清楚系の……まるでお姉ちゃんみたいな人なんだって思ったら、胸がざわついて苦しい。

釈然としないまま、美容師さんのお世辞を受け流していると、佑さんが戻ってきた。
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