溺愛アフロディーテ 地中海の風に抱かれて
そう言おうとした時、私は思わず言葉を飲み込んだ。
資本家と労働者。
それはつまり、ミケーレの家族が過激派に殺された原因の一つではないか。
危うくそれを口にしそうになってしまった。
ミケーレを傷つけたくはない。
言うべき言葉を見つけられなくて、私は口を開いたまま固まってしまった。
「……魔法にかけられているみたいで」
やっと出てきた言葉は自分で聞いていても恥ずかしいセリフだった。
ミケーレが微笑む。
「違うよ」
違う?
「君だよ。君が僕に魔法をかけたんだ。だから僕は無敵だ。君のためならなんだってできるよ」
「お金で買えるから?」
「お金で買える物はもうなんでも持っているよ。日本の至宝、大里健介だって僕が買った」
ならば、私が彼に与えられる物など、もう何もないんじゃないんだろうか。
私は彼を真っ直ぐに見つめた。
「私があなたに与えられる物があるなら教えて欲しい」
「君の存在そのものだよ」
彼の唇が重なる。
私も彼を求めていた。
彼に抗うすべを知らなかった。
置かれた境遇の違い以外に彼を拒む理由はない。
夢であるなら見ていればいい。
出会いは偶然。
必然とするのは運命。
ならば私はそれに身を委ねればいいのだ。
気がつくといつのまにか私は彼に抱き上げられていた。
思わず彼の首に腕を回す。
「日本ではこれを『お姫様抱っこ』と呼ぶんだろう。マイ・プリンセス」
ミケーレが見張り台の石段を下りて芝生の上を歩く。
私は彼と目を合わせることができずに星空を眺めていた。
資本家と労働者。
それはつまり、ミケーレの家族が過激派に殺された原因の一つではないか。
危うくそれを口にしそうになってしまった。
ミケーレを傷つけたくはない。
言うべき言葉を見つけられなくて、私は口を開いたまま固まってしまった。
「……魔法にかけられているみたいで」
やっと出てきた言葉は自分で聞いていても恥ずかしいセリフだった。
ミケーレが微笑む。
「違うよ」
違う?
「君だよ。君が僕に魔法をかけたんだ。だから僕は無敵だ。君のためならなんだってできるよ」
「お金で買えるから?」
「お金で買える物はもうなんでも持っているよ。日本の至宝、大里健介だって僕が買った」
ならば、私が彼に与えられる物など、もう何もないんじゃないんだろうか。
私は彼を真っ直ぐに見つめた。
「私があなたに与えられる物があるなら教えて欲しい」
「君の存在そのものだよ」
彼の唇が重なる。
私も彼を求めていた。
彼に抗うすべを知らなかった。
置かれた境遇の違い以外に彼を拒む理由はない。
夢であるなら見ていればいい。
出会いは偶然。
必然とするのは運命。
ならば私はそれに身を委ねればいいのだ。
気がつくといつのまにか私は彼に抱き上げられていた。
思わず彼の首に腕を回す。
「日本ではこれを『お姫様抱っこ』と呼ぶんだろう。マイ・プリンセス」
ミケーレが見張り台の石段を下りて芝生の上を歩く。
私は彼と目を合わせることができずに星空を眺めていた。