溺愛アフロディーテ 地中海の風に抱かれて
半島の入り組んだ海岸線に沿って飛行しながらミケーレが説明してくれる。
「ここがポジターノ。急斜面の街並みがすごいだろ。もうすぐアマルフィを通過するよ」
狭いビーチをうめつくすように観光客がたくさんいる。
あらためて今が八月のバカンス・シーズンであることを意識する。
「カプリ島とは違ってにぎやかね」
「ああ、船が動かないんで、みんなこっちに来てるのかもね」
本来はこんな風に混雑しているはずなのだろう。
昨日カプリ島の絶景を独り占めしていた私は複雑な気持ちだった。
観光客目当ての商売をしている人は死活問題なんじゃないだろうか。
V字型の狭い谷間にはさまれたミニチュアのような街が現れる。
アマルフィだ。
ヘリコプターは街の正面の海上でホバリングする。
ドーム屋根の大聖堂や、修道院の回廊、丘の上にたたずむ砦の廃墟。
それを包み込むように斜面両側に広がるレモン畑。
それらすべてが一枚のイタリア絵画のようだ。
ヘリコプターが動き出し、高度を上げる。
「ほら、あれがラヴェッロだよ」
ミケーレの指さす前方に、海面から垂直に切り立つ断崖が見える。
シフォンケーキのような高台にローマ時代風の壮麗な街並みが広がっている。
「ずいぶん高いところにあるのね」
「ああ、三百メートルくらいはあるかな。日本だと東京タワーくらいの高さだね」
ヘリコプターはその高台の正面にあるひときわ豪華な建物に向かって進んでいく。
断崖に刻まれたつづら折りの小道をタクシーが上ってくる。
まるでジオラマ模型の小道具みたいだ。
ヘリポートが見えてきた。
着陸する直前にふわりと浮く。
デリケートな部分をミケーレに愛されたかのような錯覚が背筋をはいのぼる。
エンジンが止まって扉が開けられる。
地面に降り立つと膝が震えていた。
そんな私にミケーレが手を差し出す。
「怖かった?」
風景に目を奪われていて、思ったほど怖くはなかった。
「慣れないだけ」
「そのうち慣れるよ」
そんなに乗る機会があるのもやっぱりこわい。
「ここがポジターノ。急斜面の街並みがすごいだろ。もうすぐアマルフィを通過するよ」
狭いビーチをうめつくすように観光客がたくさんいる。
あらためて今が八月のバカンス・シーズンであることを意識する。
「カプリ島とは違ってにぎやかね」
「ああ、船が動かないんで、みんなこっちに来てるのかもね」
本来はこんな風に混雑しているはずなのだろう。
昨日カプリ島の絶景を独り占めしていた私は複雑な気持ちだった。
観光客目当ての商売をしている人は死活問題なんじゃないだろうか。
V字型の狭い谷間にはさまれたミニチュアのような街が現れる。
アマルフィだ。
ヘリコプターは街の正面の海上でホバリングする。
ドーム屋根の大聖堂や、修道院の回廊、丘の上にたたずむ砦の廃墟。
それを包み込むように斜面両側に広がるレモン畑。
それらすべてが一枚のイタリア絵画のようだ。
ヘリコプターが動き出し、高度を上げる。
「ほら、あれがラヴェッロだよ」
ミケーレの指さす前方に、海面から垂直に切り立つ断崖が見える。
シフォンケーキのような高台にローマ時代風の壮麗な街並みが広がっている。
「ずいぶん高いところにあるのね」
「ああ、三百メートルくらいはあるかな。日本だと東京タワーくらいの高さだね」
ヘリコプターはその高台の正面にあるひときわ豪華な建物に向かって進んでいく。
断崖に刻まれたつづら折りの小道をタクシーが上ってくる。
まるでジオラマ模型の小道具みたいだ。
ヘリポートが見えてきた。
着陸する直前にふわりと浮く。
デリケートな部分をミケーレに愛されたかのような錯覚が背筋をはいのぼる。
エンジンが止まって扉が開けられる。
地面に降り立つと膝が震えていた。
そんな私にミケーレが手を差し出す。
「怖かった?」
風景に目を奪われていて、思ったほど怖くはなかった。
「慣れないだけ」
「そのうち慣れるよ」
そんなに乗る機会があるのもやっぱりこわい。