溺愛アフロディーテ 地中海の風に抱かれて
違うでしょう。
あなたは全然反対のことを言ってたじゃない。
言葉が気持ちを伝えるのには不完全だから、私たちは愛し合うのだと。
愛し合うことで愛を確かめ合うのよ。
でも、もうそれも無理なのよ。
お願いだから分かって。
お願いだから……。
彼が視界の中でぼやけていく。
涙が頬を伝って落ちていく。
大里選手がミケーレに日本語で声をかけた。
「今夜は話しても無駄だろう。まずは彼女を落ち着かせた方がいい。君も頭を冷やせ」
ミケーレが荒い息をしながらうなずいた。
「俺がホテルまで車で連れていくから、アマンダ、君が連絡して部屋を手配しておいてくれ。俺のホテルは分かるだろう?」
「かしこまりました」
大里選手がミケーレに言った。
「君はまだパーティーを抜け出すわけにはいかないだろう。早く戻るんだ」
「ティ・アーモ、美咲」
ミケーレは私と頬を触れあわせてから大ホールに戻っていった。
「イタリアの男を興奮させるなんて、あんたもなかなかの女だな」
大里選手が彼の背中を見送りながら、私にハンカチを差し出す。
「すみません」
「鼻水ふいてもいいぞ。遠慮するな」
私は彼に肩を抱かれながら玄関ホールを後にした。
車寄せに止められていたのはフェラーリだった。
カプリの車の二倍くらい大きいのに、助手席に座るのが一苦労だった。
ヒールが引っかかって脱げてしまった。
「イタリアの車って、どうしてこんなに乗りにくいんでしょうね」
「女をセクシーにするためだろ」
どういうこと?
「裾、直せよ」
ヒールが脱げただけでなく、ドレスの裾までまくれ上がっていることに気がつかなかった。
思わず顔が熱くなる。
運転席でニヤついている大里選手がエンジンをスタートさせた。
野獣の咆吼のような音が背中に響く。
エンジンが後ろにある車なんて初めてで驚いた。
車が動き出す。
思ったよりゆっくりだ。
「こんな車に乗るのは初めてです」
「俺もだ」
え?
「そうなんですか」
「ああ、ミケーレのものだからな」
「借りてるんですか?」
「チームが送迎車を手配するまで使ってくれってさ」
あなたは全然反対のことを言ってたじゃない。
言葉が気持ちを伝えるのには不完全だから、私たちは愛し合うのだと。
愛し合うことで愛を確かめ合うのよ。
でも、もうそれも無理なのよ。
お願いだから分かって。
お願いだから……。
彼が視界の中でぼやけていく。
涙が頬を伝って落ちていく。
大里選手がミケーレに日本語で声をかけた。
「今夜は話しても無駄だろう。まずは彼女を落ち着かせた方がいい。君も頭を冷やせ」
ミケーレが荒い息をしながらうなずいた。
「俺がホテルまで車で連れていくから、アマンダ、君が連絡して部屋を手配しておいてくれ。俺のホテルは分かるだろう?」
「かしこまりました」
大里選手がミケーレに言った。
「君はまだパーティーを抜け出すわけにはいかないだろう。早く戻るんだ」
「ティ・アーモ、美咲」
ミケーレは私と頬を触れあわせてから大ホールに戻っていった。
「イタリアの男を興奮させるなんて、あんたもなかなかの女だな」
大里選手が彼の背中を見送りながら、私にハンカチを差し出す。
「すみません」
「鼻水ふいてもいいぞ。遠慮するな」
私は彼に肩を抱かれながら玄関ホールを後にした。
車寄せに止められていたのはフェラーリだった。
カプリの車の二倍くらい大きいのに、助手席に座るのが一苦労だった。
ヒールが引っかかって脱げてしまった。
「イタリアの車って、どうしてこんなに乗りにくいんでしょうね」
「女をセクシーにするためだろ」
どういうこと?
「裾、直せよ」
ヒールが脱げただけでなく、ドレスの裾までまくれ上がっていることに気がつかなかった。
思わず顔が熱くなる。
運転席でニヤついている大里選手がエンジンをスタートさせた。
野獣の咆吼のような音が背中に響く。
エンジンが後ろにある車なんて初めてで驚いた。
車が動き出す。
思ったよりゆっくりだ。
「こんな車に乗るのは初めてです」
「俺もだ」
え?
「そうなんですか」
「ああ、ミケーレのものだからな」
「借りてるんですか?」
「チームが送迎車を手配するまで使ってくれってさ」