ひかり
如月美桜になってから1ヶ月。
新しい生活にもやっと慣れてきた頃。
…まさか、こんなことになるなんて。
「「たっだいまぁ!」」
今日も小学校からいつも通り帰ってきた私とお兄ちゃん。
いつも、
「おかえり!」
と言ってくれるはずのおばさんが出てこない。
それより何より怖かったのは、
あの事件の日みたいに、家中が荒れていた事だった。
震えが止まらない私をお兄ちゃんが抱きしめ、恐る恐るリビングに入ると、
そこには、いつも夜遅くに帰ってくるはずの、おじさんがいた。
「おじ…さん?」
「父さん!どうしたんだよ?こんなに部屋も荒れてて。母さんは?」
「出ていったよ…」
「「え?」」
「ど、どうしたんだよ?喧嘩でもしたのか?」
「……」
「父さん!!」
バチン…バタッ
「うるっさいんだよぉぉお」
「父さん…?」
「おじさん…ねぇ…やめてよ」
おじさんがお兄ちゃんを殴った。
あんなに優しかったおじさんが。
私はお兄ちゃんの上に馬乗りになってあるおじさんに駆け寄った。
「父さん!辞めてくれよ!」
お兄ちゃんの口の端が切れて血が出ている。
「おじさん!」
バチン
「いたっ」
一瞬何が起きたか分からなかった。
殴られた…?
倒れる時、ダイニングテーブルの上のものがバサバサっと落ちた。
そして、その中にひとつのメモを見つけた。
…私は見てしまった。
おばさんのきれいな字で書かれたメモ。
『お父さんへ
ごめんなさい。子供ができました。
わかると思うけど、あなたとの子ではありません。子供たちをよろしくお願いします。
さようなら。』
…あぁ。なんでこんなに上手くいかないんだろう。
その日から全てが変わってしまった。
お酒を浴びるように飲んで、私たちを殴って、蹴って。
お兄ちゃんと私は、毎日怯えながら暮らした。
……何も出来ずに。
そんな生活が、5年も続いた。
お兄ちゃんは、中学1年生。
私は小学6年生になった。
この頃、暴力に加えて
性的な暴力も振るわれるようになっていた私。
「おじ…っさんっ、やっ、やめてっ、お、ぉ願いします」
「うっせんだよ!」
バチン
「うぅぅっ、」
スカートの中に手が入ってくる。
「やっ、め、て」
ガンッ
「やめろよ」
「…お、にい、ちゃん」
「行くぞ」
お兄ちゃんは変わった。
髪は明るくなっていて、夜も帰ってこなくなっていた。
暗くてよく見えないけど、ピアスも開けているようだった。数日ぶりのお兄ちゃんは、また大人になっているようだった。
お兄ちゃんに腕を引かれ家から飛び出した。
「ごめんな、大丈夫か?」
「…うん」
抱きしめられる。
…そう、私のただ1人の味方は、お兄ちゃんだけだった。
そして、お兄ちゃんと私は恋仲になっていた。
チュ
「ごめんな、ごめんな、美桜」
「いいの、でも寂しかった。」
「美桜…俺強くなるから。俺が高校生になったら
、俺が金稼ぐ。だから、美桜、2人でそれまで耐えよう。」
「うん、でも、もうどこにも行かないで。」
「あぁ、分かった。」