ひかり
ガチャ
金属製のドアが開く音がする。
ほんの1秒前まで、外まで聞こえるほどガヤガヤしていたのにピタッと音が止んだので不思議に思った私はお兄ちゃんの胸にうずめていた顔を恐る恐る上げる。
……またもや大量の男の子達が。
それはもう見渡す限り……。
「れ、蓮翔さん、お疲れ様です!」
「「「お疲れ様です!」」」
おっきい倉庫だから大きく響く声。
数十人の男の子たちの声がピッタリ揃っていて、感心……
……すごく視線を感じるような……?
あ、あいさつ…した方が…いいよね…??
外ではあまりにも怖すぎて固まっちゃったけど失礼だよね…?お兄ちゃんも近くにいるし…大丈夫な…はず。
「お、お兄ちゃん降ろして…?」
「「「「お、お兄ちゃん?!」」」」
「なんだ…彼女じゃねーのか…」
「びっ…くりしたぁ、まぁ、特定の相手いなくても、女には一生困らないだろうな」
「てかあの子めっちゃ可愛くね?」
「やべぇな、」
さっき外にいた子達もぞろぞろ入ってきて、私とお兄ちゃんを囲む。
なんかこそこそ話してるし…。怖いなぁ…、でも、頑張らなくちゃ!!!
「え、えっと、こんばんは…蓮翔お兄ちゃんの妹の美桜です。…おじゃまします…?」
ぺこりと頭を下げる。
「「「「かっ、かわいい…」」」」
か、かわいい?私が??言われ慣れていない、思いがけない言葉に、私の顔は今にも火を噴きそうなほど真っ赤だろう。
「美桜…よく頑張ったな」
優しいお兄ちゃんの声が上から降ってくる。
目線を上げてお兄ちゃんを見ると、にこっと笑って頭をぽんぽんしてくれる。
…落ち着くなぁ…頑張って良かった…!
「蓮翔さんが…笑った…」
「俺初めて見た…」
「まじか。笑うと全然雰囲気ちげーな」
「男の俺でも惚れそう…」
また、こそこそ聞こえる…。
悪口…かな…?やっぱり男の子は怖い……。
ギュ
「…美桜…さっきみてーな可愛い顔、俺以外に見せるの禁止。」
「う、うん。分かった!」
「それからおめーら」
周りをぐるっと囲んでいる男の子達を見回しながら言う。
「こいつに指一本でも、触れてみろ…?どうなるか…分かるよな?」
微笑を浮かべるお兄ちゃん。
……こ、怖い。
「「「はい!もちろんです!!」」」
「美桜…いくぞ?」
「う、うん?何処に?」
「上」
「う…え…?」
…うん、たしかに気になってはいた。
怖くて、視線を泳がしていた私。
上から見下ろしている男の子たちがいるなぁって。
素人の私でも分かるくらい、空気感の違う3人の男の子たち。
「もしかして…あそこ?」
「うん、そうだよ。俺のこと信じて欲しい。ここにいるヤツらは全員優しくて、強いから。目付きわりーし、髪色派手だし、ピアスもジャラジャラ付けてるし…。けど、ほんといい奴らしかいないから。」
「うん、お兄ちゃんがそんなに言うくらいだからいい人達なんだと思う。…行こ?」
「おう!」
私は一歩一歩踏みしめるように階段を上って、2階のひとつのドアの前にたどり着いた。
「美桜、ここは幹部室っていうんだ。幹部と、幹部の女と、姫だけが立ち入ることが出来る。」
「幹部…室?姫…??」
首をかしげまくるわたし。
「まぁ、色々と中で説明すっから、とりあえず中…入ろ?」
「うん。」