ひかり
*第2章*
入学式
パリッとした糊の匂いがする。
…ピッカピカの新品の制服。
今日から女子高校生です。
「美桜ーっ!行くぞー!!」
「はぁーい!!」
そして新居。
お兄ちゃんと私は約束通り、二人暮しが始まった。…なんの風の吹き回しか、お父さんが買ってくれたのだ。
バタバタと下に降りる。
「おはよ!」
「制服、めっちゃ似合ってる」
「…ありがと…」
…私自身、制服がとっても可愛くって、着るのが楽しみだったから、大好きなお兄ちゃんに褒められて、多分顔が真っ赤だ。
白いブラウスに、黒の生地に白の縁どりのネクタイ。黒いジャケットには、聖蘭学園のかっこいい校章が。プリーツのたくさん入った、膝上のスカート。腰くらいまで伸びた焦げ茶の髪にお気に入りのカチューシャを付けて。薄くだけど、メイクもした。
…高校生活は楽しく過ごしたいもん…!!
お兄ちゃんと一緒に外に出た。
ふわっと暖かい春の風が私たちを包んで、自然と笑顔になった。
「おっはよー!」
「おはよ、美桜!」
「…おはよ。」
そこにはいつもの3人の顔が。
……初めてあった日から、ほとんど倉庫で生活していた、お兄ちゃんと私。
大雅、飛羽磨、昇矢、お兄ちゃん、私。
そして、龍雅のメンバー全員と、
色んな思い出を作ってきた。
もう、家族みたいなもんだ。
私のことを、龍雅のみんなは認めて、受け入れてくれた。
「「「めっちゃ制服似合ってる」」」
「ありがと!」
「…おい、蓮翔…こりゃあ、やばくねぇ?」
「あぁ、美桜に学園中の男たち、なんなら女までが群がる様子が目に浮かぶ。」
「だよな…やばいよな。」
…なんかコソコソ聞こえるけど…?
「ねぇ!早く行こ?遅刻しちゃう!!」
「そうだな。」
「…俺らが守ればいい話だし。」
「やっぱ、護衛付けるか…」
朝からコソコソしちゃって、嫌な感じ。
5人で車に乗りこんだ。
いつも、飛羽磨の家が、車を出してくれる。
そして…私の大好きな…
「瀧さん!!今日もよろしくお願いします!」
「美桜ちゃんおはよう」
飛羽磨の家のドライバーさんの瀧さん。
優しくて、大人な雰囲気で、大好き。
…パパみたいな?そんな感じ。
いつも通り、どうでもいい、たわいもない話をしていたら、いつの間にか学園前。
「瀧さんありがと!!行ってきます!」
「行ってらっしゃいませ。皆様。」
由緒ある重みを感じる校舎。
桜の花が満開で、晴天の入学式日和だった。
そして、人、人、人。
芸能人の出待ちかなというレベル。
「大雅様っ!!」
「…おはよう。」
「今日も爽やかぁ!やっぱ、王子様♡」
「飛羽磨くんっっっ」
「みんな今日も可愛いね!おっはよー!」
「可愛すぎるぅ!!!やっぱ聖蘭のアイドルだわぁ♡」
「昇矢様ぁぁ!!」
「………」
「今日もクールぅぅ!!すてきぃぃ!!!」
「「「蓮翔様ぁぁぁぁぁぁあ!!!!!」」」
「…おはよ」
「うはっ!」
…うん。毎朝この惨劇見なきゃなのかな。
泣きわめく子、鼻血が出てる子、倒れそうになってる子。
…………?
すっごい、囲まれてるんだが?!
「君、入学生?」
「可愛いねぇ!どこ中出身?」
「名前なんて言うの?」
「僕が体育館まで案内してあげる!」
…お、おう。
ちょっと倒れる寸前なんだが。
お兄ちゃんたちどこぉぉお??
龍雅の子たちと、やっと仲良くなれてきた私。
…まだ、知らない子は…。。
「どけ。」
「失せてね、君たち」
「俺の美桜だから」
「…………」
お兄ちゃん、大雅、飛羽磨、昇矢が人混みの中から現れる。
サッと血の気が引く男の子たち。
お兄ちゃんの高圧的な話し方。
爽やかすぎる微笑みで、すごい発言をサラッとする、大雅。
いつもにこにこ飛羽磨が無表情で、私を抱きしめる。
そしてなんと言っても、昇矢様の睨み。
…こっちまで怖くなってきた。
「も、もう、大丈夫だよ。」
4人に完全包囲されながら、体育館へ向かう私たち。
……高校生活、既に幸先が不安です。