ひかり

私を引き取ってくれた如月家は、お父さん、お母さん、お兄ちゃんの3人家族だった。
お父さんの如月勤は、世界的名医。「如月医科大学総合病院」という、全国に分院のある、大病院の院長だった。

…つまり、お金持ち。
東京の一等地、当時、1年生の私が見てもわかるような、超高級住宅街の中でも、一際大きな家が、今日から私の家らしい。

よく、ドラマとかで見るようなメイドさんがずらーっと並ぶということはなかった。どうやら、家事は全ておばさんがやってるらしい。
少し安心した。知らない人に囲まれて生活するのは、普通の家で育ち、そのあと、大家族みたいな園で暮らしてきた私はきっと、耐えられない。

「美桜ちゃん、ようこそ。私たちのことは、無理してまま、ぱぱって呼ばなくていいのよ。おばさん、おじさんでいいからね。少しずつ仲良くなりましょうね。」

優しい笑顔で話しかけてくれる女の人。

「美桜ちゃん、欲しいものや、困ったことがあったら、いつでも言ってね。」

頼もしい大きな手で頭を撫でながら話しかけてくれる男の人。

「みーおちゃん!俺、蓮翔!美桜ちゃんのお部屋、俺の隣だよ!案内してあげる!」

私の腕をぐいぐい引っ張りながら元気いっぱいで話しかけてくれる男の子。

今日からこの家の子だと思うと、緊張して、少し怖かったけれど、優しい雰囲気に、安堵した。

「美桜です!今日からよろしくお願いします!」

笑顔で言うと、おばさんが抱きしめてくれて、涙が出そうになった。

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