真 実
春樹・・・
ここ数日の焦燥感は、ひどかった。
だが、椿との子供・星樹の事は
命に変えても守らないと
その気持ちだけで
動いていた。
俺と椿の出会いは・・・・
椿は、俺の経営する
ピアノバーでピアニストとして
働いていた。
店長の奥さんの後輩で
店長がピアニストを探していると
話しをした事がきっかけで
椿が[Assam]でピアノを
弾くようになったようだ。
昼間は、お祖父様の仕事を
手伝いながら。
(お祖父様は、雛人形作りの名人
人間国宝の方だ。)
夜は週に二回Assamでピアノを弾く
椿の事は、業界でも話題になり
俺もAssamに、行って見ることにした。
店長の萩原は
俺の訪問に驚いていたが
丁度、椿がピアノを弾く所だったから
俺は、自分の口に指を立て
萩原にみせた。
萩原は、頷いて
その場を離れ、俺に飲み物を運んで
くれた。
耳を澄ませてピアノに集中する
プロ顔負けの素晴らしい音とタッチに
引き込まれていた。
一曲、弾き終わり
ピアノの横に立ち
頭を下げる椿を見て
俺の回りから全ての音が消えた。
漆黒の長い髪・・
まるで人形のように
美しい・・
顔だけでなく、立ち振舞いも
優雅で気品がある
俺は一瞬で椿に落ちてしまった。
それからは、椿がAssamで
ピアノを弾く時は、
必ず店に行きピアノを聴く。
二回目のとき
店長の萩原に無理やり
紹介させてからは
俺が、椿を自宅に送るようにした。
最初は、運転手付きの車に
乗っている俺に嫌な顔をしていたが
だんだんと慣れていき
仕事が忙しくないときは、
俺は、自ら運転をして
椿を自宅に送った。