真 実
今、椿は・・・・
平塚 美琴と呼ばれているようだ。
自分の過去について記憶はなく
島の高台にある家に住んでいる。
その家の持ち主は
平塚 東樹。
椿は、目覚めてから
リハビリを繰り返し
一人で歩けるようには
なったが、ほとんど
ベッドと部屋のベランダ
近くの浜辺しかでない
いや、出ないのではなく
出させてもらえないようだ。
才賀先生は、東樹に頼まれて
往診しているが
妻だと言う女性が
あまりにも東樹を怖がる?嫌がる?
事に疑問があったと。
最初は、過去を忘れたからと
思っていたが
自分や看護師といる時は、
穏やかな顔をしているが
夫である東樹がきて
女性の髪や手に触れると
拒絶したようにふるえたり
びくびくする
しばらくしたら、おさまるのかと
思っていたが・・・
一向におさまらず
ある日、浜に散歩に出たときに
女性に訊ねてみた
「あなたは、夫である東樹さんに
対して何かあるのかな?」
と、すると彼女は
「わからないのです。
先生にこんなこと申しても
良いのかわかりませんが・・
あの方・・
私の夫だというのですが
何も感じないのです。
ただ・・・」
「ただ?」
「・・・・・触られるのも
嫌悪感しかなくて・・
先生、記憶がないと
人は、そのようなことが起こるの
でしょうか?」
「まぁ、一概には言えないが
記憶をなくす事で
色々な所に制御することが
おきているかもしれない。
わしも様子を診ておくから。」
と、伝えると
少し、ホッとした顔をしていた。
だが、それからも、
彼女の記憶が戻る事もなく
夫である東樹に対しても
打ち解ける事はなかった。
何か、おかしいと思い
もしかしたら、彼女の行方を
探している人が
別にいるのではないかと思い
警察に訊ねてみたらしい。
才賀先生の話しでは
平塚の家には、
家政婦が一名と
時々、若い女性と
年配の男性が訪れると。
その女性と男性は、明らかに島の
人間ではない。
島の人間なら直ぐに
わかると言われた。
先生の所の看護師が
二人の写真を撮ってくれたようで
それを見せられて
驚いた。