真 実
美琴(椿)・・・・
目を覚ましてから
どのくらい過ぎたのだろう?
歩行も
なんなくできるようになった。
だが・・・記憶は・・・
何・・一つ・・・・
思い出せて・・いない・・
ただ・・ただ・・・
・・切なく・・悲しい・・
相変わらず
部屋とベランダ
砂浜しか出ることはない
外に出たくても
出口がわからない
どこにいくにも・・
何もわからない・・・・
毎日・・毎日・・・
きれいな海を見ているだけ・・・
相変わらず
夫と名のる東樹さんが
食事を運んでくれる
たまには、気分を変えてと、
ベランダに用意してくれた
テーブルと椅子で
食事をしたり、
部屋の中で食べたりしている。
そのとき、
彼が私に触れる事が
嫌で、嫌でたまらない
彼は、最初は優しかったが
いつまでも怯える私に
「美琴、いつまで、夫である
俺を拒絶する!!」
と、無理矢理、キスをしてきたり
抱き締められベッドに倒される
「いやっ、やめて・・・うっ・・」
その場で嘔吐してしまい
彼がびっくりして離れた隙に
トイレに駆け込む
大量に吐いたわけではないが
シーツや布団は片付けられて
新しいものが置いてある。
私が吐くと、
彼はしばらくは
私に触れる事はなく・・
また・・日にちが経過すると
私に触れてくる
いったい・・いつまで・・・
こんな思いをしないと
行けないのだろうか・・・
段々と食事を受け付けられなく
なって行き
才賀先生が往診にきてくれる
私を心配そうに見る才賀先生
翌日には、看護師さんと一緒に
浜辺へと散歩に連れ出してくれた。
先生と看護師さんといるときだけは
ゆっくりと息ができる。
そんな才賀先生から
「今は、我慢するのじゃ
食べれなくても、少しでもよいから
食べて、寝込まないように
しなさい。きっと大丈夫。」
と、耳元で囁きながら
微笑んでくれた。