死者の舞踏〜最期のメッセージ〜
呼吸不全には、急性と慢性がある。急性はもともと肺に異常のなかった人が突然酸素を取り込めなくなった状態だ。その原因を藍たちは調べることになった。
「風邪のような症状が最初に現れて、そして呼吸不全で死ぬ病気か〜……」
朝子がブツブツ言いながら医学書をめくる。藍と大河、そして聖は大塚哲也の血液検査の結果などを見ていた。異常などは見当たらない。
「異常はどこにもありませんね〜」
「感染症ならば、どこの国に行ったかにもよるだろ」
大河と聖がそう言いながら、何度も結果の書かれた紙を見つめる。藍も医学書をめくり続けていた。
「すみません!失礼します!」
その時、部屋のドアが開いて原刑事が入って来る。藍たちの視線は原刑事へと向けられた。
「どうかされましたか?」
藍が訊ねると、原刑事はポケットから手帳を取り出す。
「大塚さんの海外渡航歴がわかりました」
部屋にいる全員の顔が真剣なものとなる。
「大塚さんは、ちょうど一年前にペルーに行ったきり海外へは行っていません」