死者の舞踏〜最期のメッセージ〜

「朝子さんがくれたんですよ！代わりに行っておいでって」

木下朝子（きのしたあさこ）は、藍と同じく法医学研究所の監察医だ。デートを邪魔されることになり、如月刑事は一気に不機嫌な顔になる。そんな如月刑事を見て、大河は満足そうに微笑んだ。

「バレエは、十五世紀にルネッサンス期のイタリアの貴族の宮殿舞踊が原型と言われているんですよ。そして、フランスにイタリアの一族の娘が嫁いだ際に様々な文化が持ち込まれ、フランスでもバレエが盛んになったそうです。時代が流れると、クラシックバレエやモダン・バレエなどのバレエ団も作られました」

大河の説明に、藍は「すごいわね」と呟く。とてもわかりやすく歴史を教えてくれた。如月刑事はしまったと言いたげな顔をし、大河はニッと笑う。

三人は文化会館の中へと入る。すでに客席の多くは埋まっていた。藍は如月刑事と大河に挟まれて座る。

「藍、寒くないか？お前は東北出身なのに寒がりだからな。よかったらこれを使え」

如月刑事は持っていた大きめのかばんの中からひざ掛けを出す。グレーのふんわりとしたひざ掛けだ。

「わざわざ持って来てくれたの？ありがとう」