番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
18話「本当の顔」
18話「本当の顔」
「やけに冷静ですね。花霞さん」
蛍はいつもと変わらない表情で冷たく光るナイフを持っている。
それが現実とは思えない光景のように花霞
は感じた。
「……今日はすごく嫌な事が起こる気がしていたの。だから、これなのかなって思って」
「女の勘ってやつですか。……少し早いですけど、店を閉めてください。少しでも変な行動をしたらどうなるか、わかりますよね」
「………どうしてこんな事を?」
「それは後で話します。早くしてください」
蛍はそう言ってナイフの先を花霞の服ギリギリまで近づけた。花霞は「わかった」と返事をして、蛍を店内に残したまま、店のドアを施錠した。
「終わったよ」
「では、行きましょう。俺の腕を掴んで歩いてください。離れたり、不審な行動した時はポケットの中の物で刺すので気を付けてください」
「…………わかった」
花霞は蛍が言った通り、彼の腕を掴み店を出た。蛍は片手をポケットに突っ込み開いた手でラベンダーのブーケを持っていた。
日が沈み、すっかり夜になっているが街中は人が多い。花霞の姿を見ても、恋人同士で歩いているとしか思われないだろう。
花霞はただ彼の隣を歩く事しか出来なかった。
しばらく歩くと街の中心街から離れてオフィス街が続く場所になる。そこは繁華街とはちがってひっそりとした雰囲気だった。大通りを曲がり、小さな道路が続く場所に着くと、もう周りにも人はいなかった。
さすがに花霞も恐怖を感じ、足が止まってしまいそうになる。足がすくむんでしまったのだ。
そんな花霞を見て、蛍は明るく笑った。