番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
「おまえに好意を持ったように近づくために花が好きなんて言ってたけど、俺は花なんて大嫌いだよ。特にラベンダーなんて見るだけで吐き気がする」
「……………」
「反抗的かと思ったら次はだんまりか。まぁ、いいさ。俺は………」
「麻薬組織の1人、何でしょ?」
花霞の言葉を聞いて、蛍の目は大きく開いた。けれど、それはすぐに戻りニヤリと笑みを浮かべ、蛍はサラリと髪をかきあげた。耳につけているピアスが光る。
花霞は彼の本当の姿を始めて見たような気がした。
「なるほど。………俺の正体を何となくわかっていたから冷静でいられたって訳か。いつから気づいていた?」
「………始めから。初めてあなたと会った日から」
「…………何故?」
「花屋に来たら花を探しているのだから、まず花を見るわ。けど、蛍くんは先に店員を見てた。……だから、始めは誰か探しているのかと思ったの。………それと、あなたから少しだけど薬の匂いがした。麻薬か何か、だよね?1度嗅いだ事があるからすぐにわかったわ。仕事柄、香りには敏感だから」
「なるほど。初めから警戒されてたって訳か」
ハハッと笑い、蛍は持っていたナイフをユラユラ揺らした。
花霞は緊張しながら言葉を紡いだが、蛍は怒っていないようで、一安心をした。
花霞は、拳銃で撃たれた事件の後、何回か取り調べを受けていた。その際、事件の時に薬の事を聞かれたのだ。こういう白い粉はなかったか。匂いはどんなものだったか。その時に、ドラッグと呼ばれるものの香りを少しだけ嗅いだ。それに、事件の時もラベンダーとは違う香りを感じたので、覚えていたのだ。
匂いは記憶を呼び戻すきっかけなると言われている。それを花霞は身をもって体験したのだった。