番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
切れ味のよい小さなナイフを向けられ、体が固まってしまう。そして、ブラウスのボタンが全て切り落とされ、前が開く。キャミソールの肩紐も片方切られ、あっという間に下着が露になる。
「お前が余計な事を言うからだ。次に何か言ったらすぐに肌を切り裂くからな」
「…………」
目の前の男の低く怒った声に、花霞はコクコクと頷くしかなかった。
蛍は、大きくハーッと息を吐いた。冷静になるためだろう。蛍の視線は先ほどよりも強くはなくなったけれど、花霞の事を警戒しているようだった。
「…………何故、遥斗との事はどこで知った」
「…………蛍くんのメールアドレスからよ。ブーケ教室に入会するために教えてくれたでしょ?その時に何となく見てて気づいたの。蛍と遥斗………アナグラムだって」
「………………」
花霞が気づいたのは、本当に偶然だった。
蛍はローマ字にすると、hotaru。
遥斗は、haruto。
似ているなと思ったのだ。そして名前の後ろには4桁の数字があった。
「蛍くんのメールアドレス、hotaruの名前の後ろには4桁の数字。………遥斗さんが亡くなった日だってすぐに気づいたわ」
名前が似ていると思ったのは偶然。
けれど、命日は椋と亡くなった場所に行き手を合わせ、毎年欠かさずにお祈りしようと2人で決めていたのでしっかりと覚えていた。
「………わかった。その話しはおしまいだ」
蛍は花霞の言葉を聞いて、一瞬悲しんだ表情を見せた。だが、その話しは聞きたくなかったのか、すぐに話しを変えてしまった。
「おまえがする事を教える。今から、お前の旦那に電話をして檜山を殺せと伝えろ」
蛍の言葉は、今までで1番殺気だっていた。
そして、予想しなかった蛍の言葉に、花霞は息を飲んだのだった。