番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
悪いことはしている自覚はあった。
けれど、いい仕事をすれば認められてお金が入る。普通の会社よりそれはハッキリしているのが蛍には合っていた。
けれに、組織の人間と仲良くならなくていいのもよかった。裏社会では、裏切りは当たり前。信用していて、裏切られ捨てられ殺される。それが日常だった。
だから、蛍には仲がいい友達など誰もいなかった。
ただ仕事を黙々とこなせばいい。
生きていくために必要な金さえ手にはいればいれでいい。蛍はそうやって生きてきた。
「へー。蛍(ほたる)って書いて、(けい)っていうの?珍しいね」
ある日、突然そう話し掛けられた。
それがその男との出会いだった。
麻薬組織に入ったばかりだという新人が挨拶に来たのだ。蛍の名前を聞いて、ハルトと呼ばれた男はニッコリと笑った。