番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を



 「ほたるってなんかいいな。ホタル、よろしく」
 「………俺、蛍(けい)って名前なんだけど」
 「まぁまぁ。ホタルとハルトって何か似てるじゃん。アナグラムで一緒だし」
 「………変な奴」

 
 そんな事を言いながらも、ハルトは頭が回る男だとわかった。瞬時にアナグラムだと気づく人など、なかなかいないはずだ。
 気をつけなければならないな、と蛍は思った。

 けれど、ハルトは蛍を気に入ったのか、暇さえあればハルトの仕事場である古びたビルの3階にある事務所に遊びに来るようになった。


 「ホタルー!お昼食べに行くぞ!」
 「いや………今、忙しいので無理」
 「なんだよ。そんなこもってるからヒョロヒョロなんだぞ」
 「ハルトさんは鍛えてますよね。何かスポーツしてたんですか?」
 「バレーやってた。今は筋トレぐらいしかしてないけどな。あと、走り込み」
 「あー筋肉バカ…………いったいんですけど!」

 ホタルの小さな呟きが聞こえたようで、ハルトの拳がホタルの頭に落ちてきた。頭を抑えて抗議の声を上げるが、ハルトはホタルの手を取って引っ張って行く。


 「俺は腹が減って限界なんだ。文句ばっかり言ってないで、さっさと行くぞ」
 「………はぁー、しょうがないですね」


 ハルトはため息をつきながら財布を持って事務所を出た。



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