番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
いつの間にか事務所に訪れていた檜山が蛍の後ろに立っていて。オールバックにした頭に、鋭い目付きの瞳、がっしりとした体格の男だった。彼の後ろには数人の部下とボディーガードが立っていた。
「警察幹部と密会。スパイではなくても、情報を売っていた可能性があるな………。蛍、よく証拠を見つけたな、礼を言う。………おい、ハルトを捕まえろ」
「はい」
檜山は後ろに控えていた部下の1人にそういうと、その男はすぐにスマホを取り出しながら廊下へ出ていった。
「待ってください、檜山さん!これは何かの間違えですっ。嘘の情報かもしれませんし………」
「これはおまえが調べたものだ。警察の資料を盗み出せるのはおまえぐらいだろう。助かったよ」
「………檜山さん、ハルトさんには何もしないでください!お願いします………」
「………おまえ、何言ってんだ?組織の情報盗む奴に何もしないで、だと?………ふざけてんじゃねーぞ!」
「………かはっっ!!」
檜山にすがり付きながら懇願していた蛍を、檜山は長い足で思い切り蹴りつけた。蛍の体は床に叩きつけられる。
「………証拠みつけたぐらいでいい気になってんじゃねーよ。………もしかして、あれか?おまえも警察か?」
「っっ!違います………」
「だったら黙って俺の指示にしたがってろ!ハルトには俺が話しをする。スパイだった時は俺が始末する」
「っっ!!」
よろよろと立ち上がろうとした檜山の腹を、檜山はまた思い切り蹴り上げた。
あまりの痛さに、蛍は声にならない悲鳴を上げた。悶絶し、意識が遠退いていくのがわかった。
「行くぞ………」
檜山の声の後に、バタンッと強くドアが閉まるのを聞いた直後、蛍は意識を失ってしまったのだった。