番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
「ハルトさんっ!!」
その言葉と同時に、ハルトが歩く道の隣に車が止まった。
そして、窓が開くとそこからスーツを着た腕が伸びてきた。その手には拳銃があった。
ヒュッと息を飲んだ。どんなに叫んでも、走っても無駄だとわかっているのに、蛍はそれを止める事など出来なかった。
「ハルトさーーーんっっ!!」
バンバンッと渇いた音が街に響いた。
それと同時に、ハルトの体がビクビクッと揺れた。
そして、フラフラッと踊るようによろけた後ハルトはバタッと倒れた。
それを確認した後、黒い車はまた急発進して去っていく。
ハルトの周りを歩いていた女が突然倒れたハルトを見て、甲高い悲鳴を上げて走り去っていく。
蛍は「いやだ………やめてくれっ」と呟きながら、ハルトの元へと走った。
蛍は彼の元へと駆け寄ると、そこには彼とは思えないほどのやつれボロボロになり、体から血を流す変わり果てたハルトの姿があった。
怖いという気持ちは何一つなかった。
ハルトが目の前にいる。ただそれだけだった。
ハルトの体はピクリとも動かない。ただ、体から赤黒い血が次々と流れ出ていた。