番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
「ハルトさん………俺………俺が………ごめんなさい…………」
蛍は、手を伸ばし彼の頬に触れた。
痩せ細り青い肌はまだ少し温かい。
「ハルトさん………ハルトさん………俺を置いていかないでよ………ハルトさんっ!!!」
涙がボロボロと落ちる。自分の頬に、地面に、ハルトの体に。
どんなに涙を流して叫んでも、目の前の男は返事をしてくれない。
ハルトの体を持ち上げようと、手を伸ばした時だった。
「遥斗ー!!」
後ろから複数の声と足音が聞こえた。
振り替えると、少し先にスーツ姿の男、そして警察官の服装の男たちがこちらに向かってくるのが見えた。
「っっ!!くっそっっ!!!」
蛍はハルトから離れ手を離そうとした時だった。彼の胸のポケットにあるものが入っているのを見つけた。
蛍はそれを咄嗟に取り、その場から逃げ出した。
必死に走った。警察が追ってくる事はなかったけれど、それでも涙をながし続けながら逃げ続けた。
遠回りをして、事務所に帰り、ベットリと血がついた手はもうすでに乾いていた。
急いでPCを開き近くの監視カメラのデータベースに入り込み自分がうつっている画像周辺のデータをすべて削除した。
檜山の写ったものは残した。これであいつは警察に追われることになるだろう。
フラフラになりながら、蛍はハルトのポケットから撮ったものを取り出した。
そこには、警察の服を着たハルトが複数の仲間と笑顔で肩を組んでいる姿がうつっていた。
キラキラと微笑む表情。それは組織に居た時と変わらないものだった。
「ハルトさん…………ごめんなさい………俺が、調べなければ…………檜山に見られなければ…………ハルトさん…………」
蛍はその日、涙が枯れるほどに泣いた。
人が死んで泣くのは初めてだった。
もうあの人には会えない。
自分を友達だと言ってくれた唯一の存在。
そんな蛍のとって太陽のような人を亡くしたのだ。
その日から、蛍の世界はまた真っ暗に変わったのだった。