番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を



 「………それでも、俺は檜山が許せないんだ。俺が殺せば、悲しむ人なんていないんだから、殺させろよ!」
 「………遥斗さんが悲しむよ。私も蛍くんがいなくなるの、寂しいよ………そんな事、言わないで…………」
 「花霞さん………俺はそんな人間じゃないんだ。檜山さえ殺せば俺は………」
 「花霞ちゃんは、おまえのためにいつも花の勉強をしてたよ。どうすればおまえがわかりやすいか、どんなブーケを作れば喜んでくれるか。いつも考えていたよ………その理由、わかるだろ?」


 椋の言葉に、蛍はハッとした表情を見せる。 花霞は苦笑いを浮かべるだけで、何も言わなかったけれど、それでも蛍は花霞の想いを感じ取ったようで、瞳が揺らいだ。

 花霞は蛍が麻薬組織の1人だと思っていた。 そこから抜け出してほしい。花が好きなってくれたのなら、今の仕事を止めてほしい。麻薬をしているなら、花を好きになって夢中になって少しずつ止められればいい。
 ………蛍には明るい世界で生きて欲しいと思ったのだ。
 あんなにも優しい微笑みが出来る彼を、見捨てる事など出来なかった。


 「それに、滝川さんから聞いたよ。遥斗が麻薬組織への潜入捜査の報告をした時の話しを。本来なら潜入捜査をしている時は警察関係者には会わないようにしているが、遥斗がどうしても滝川に会いたいというので、仕方なく極秘で、会ったそうだよ。その理由は、…………おまえだよ」
 「………え………」
 「サイバー課に入れてほしい人がいると頼まれたそうだ。しっかり罪を償った後でいいから、そいつを入れてほしいと。きっと警察の大きな力になるはずだって」
 「…………そんな………遥斗さんが………そんな事………」
 「………遥斗さんの最後の言葉。さっき蛍くんが教えてくれたけど、復讐してほしいじゃなくて、笑顔で生きてほしいだったよね?………ねぇ、蛍くん。………蛍くんはまた、麻薬組織に戻りたい?」



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