番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を



 目を大きく見開いて驚きを隠せない様子の蛍に、花霞はゆっくりと話しかける。
 すると、蛍は考え込むようにジッと花霞を見つめた。
 そして、瞳に涙を浮かべながら首を横に振った。

 「………もう戻りたくない。約束したんだ、遥斗さんと明るい世界で生きるって………だから、本当はもうこんなところに居たくないんだ………」
 「そっか………。話してくれて、ありがとう。蛍くん」


 花霞は蛍に近づき、頭を優しく撫でた。
 すると、今まで我慢していたのであろう大粒の涙がこぼれ落ちた。蛍の強張った体から力が抜け、ぐったりとしながらただ子どものように声を上げて泣き続けた。
 それを花霞はそれをずっと見守り、頭を撫で続けてた。



 蛍を乗せて、椋の車に乗った。
 蛍はあれからとても静かだった。窓から見る景色をただずっと眺めてた。
 しばらく、この街並みを見ることが出来ないと感じているようだった。




< 135 / 152 >

この作品をシェア

pagetop