番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
1話「再出発」
1話「再出発」
高台には温かい風が吹いていた。
け青空を見上げると、ゆっくりと雲が流れ、視界の端には新緑の木々たちが揺れている。
花霞は、視線を下ろし、青々とした草花を見つめながら、小さな花畑のようだなと思った。緑の中に点々と咲く小さな野花は、様々な色合いで咲いている。ゆらゆらと揺れて「気持ちいい」と喜んでいるみたいに思えて、花霞は思わず微笑んでしまう。
「花霞ちゃん!」
「あ、はーい。今行くよー」
愛しい人の声が聞こえ、花霞は振り向き声の主のところまで駆け寄った。
そこには、黒いスーツを着た背の高い男性が花束を持って立っていた。
花霞は、ニコニコと笑顔を見せながら彼に近づくと。
「悪い、遅くなった」
「ううん。大丈夫だよ。ここの景色、すごく綺麗だからずっと見てられるもの」
「そうなんだよな。ここから遠くの海まで見てるんだよな」
「うん。とっても素敵な場所だね」
「あぁ…………よし、行くか」
花束を持った男、花霞の夫である鑑椋だ。
持っているブーケは花屋で働いている花霞が作ったものだった。
花束を持っていない手で、椋は花霞の手を握りしめる。少し熱くなっている彼の体温を感じ、急いで来てくれたのかなと思い、嬉しくなる。