番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
その日は事件や進展もなく、時間通りに勤務を上がることが出来た。そんな事は滅多にないので、椋は急いで自宅へと戻った。
家の部屋の鍵を開けて「ただいま」と言うと、パタパタとスリッパを鳴らし駆けてくる足音がする。
靴を脱いで顔を上げると、ニッコリと微笑むエプロン姿の花霞が出迎えてくれる。
「おかえりない、椋さん」
「あぁ、ただいま」
椋が彼女に手を伸ばして、花霞の頬に触れながら顔を近づけ、小さくキスを落とす。
すると、ほんのり頬を赤くしながら嬉しそうに笑う。出会った頃より照れる事はないようだが、まだ恥じらいはあるようだ。いつまでも慣れずにいるようにも見えるが、少しずつ彼女の心境も変化していた。
あまりに疲れすぎてただいまのキスを忘れた時は、花霞はかなりショックを受けたのだ。鏡に写る自分をチェックしたり、自分の行動を振り替えって何か彼に怒られるような事をしてしまったのか、と悩んでしまったようだった。
それからは絶対に忘れないようにしなければ、と椋は心に決めたのだった。
「今日は冷しゃぶだったよね。楽しみですぐに帰ってきた」
「お肉も野菜もたっぷりだよ。あとスープも作ったからね」
「楽しみだな。………あぁ、その前に汗かいたからシャワー浴びてくる」
「わかった!」
そう返事をすると、花霞はキッチンに戻り夕食の支度に戻っていた。