番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
顎を彼に優しく押され、微かに開いた唇の割れ目に椋の舌先が入り込んでくる。ぬるりとした感触で花霞は体が震える。
気持ちいいはずなのに、深いキスをされた瞬間はドキッとしてしまう。それは快感への期待からなのだろうと、今の花霞はわかっていた。
椋の肉厚な舌が花霞の口の中や舌を舐めていき、口の中が彼でいっぱいになる。
彼の動きに翻弄されながらも、花霞は彼の舌の動きを真似るように舌を動かすと、「ん…………」という、甘い吐息が漏れる。うっすらと目を開けると、どうように彼が自分を見ており視線が合うと微笑んだのがわかった。それだけで、体の奥がキュンッとしてしまう。
玄関に不釣り合いな水音が響き、その雰囲気だけでも気分がおかしくなってしまいそうだった。けれど、彼からの深いキスを拒むことなど出来なかった。
むしろ、もっとして欲しいと思ってしまう。
花霞は、自分から唇を押し当ててしまいたくなるのを必死で押さえた。そんな事をすれば彼に「行かないで」と言ってしまいそうだったからだ。
彼からの熱をしばらく与えられるが、それも終わりが来る。
花霞の唇から熱くなった彼の唇が離れていく。
熱を帯びたのは瞳も同じで、とろんとした目で花霞は彼を見つめた。すると、椋は自分がこのようにさせたというのに、困った表情を見せ微笑みながら、花霞を自分の腕に閉じ込めた。
「本当は君とこうやって沢山キスをして過ごすはずだったんだけどな」
「………うん。」
「でも、花霞ちゃんとキスしたから元気になったよ。仕事頑張ってくる。………それと、早めに帰ってくるから」
「うん、待ってるね」
「………続きは夜、ね?」
「…………………うん」