番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
花霞は言葉を紡ぎながら涙が溢れてきてしまう。椋を追って銃で撃たれてしまった後、緋色は生死をさまよっていた。そんな時に、ここじゃないよと背中を押して帰る場所を教えてくれた男の人が居たのだ。
それは、ただの夢なのかもしれない。
けれど、椋が「それはきっと遥斗だよ」と教えてくれた時、花霞の心はふんわりと暖かくなったのを今でも覚えている。彼の言ったように、きっとそれは遥斗なのだと、花霞も感じた。
遥斗の墓参りをしたいと言ったのも、花霞からだった。命を助けてくれた人、そして椋の心を動かした人。そんな2人にとって大切な彼に会いたかったのだ。そして、お礼を言いたかった。
その話しをすると、椋は少し複雑な表情を見せた。彼にとって遥斗は大切な人で、守れなかった人でもある。
きっと椋は後悔をしているのだろう。
遥斗を死なせてしまった事を。
だからこそ、すぐに「行こう」とは言ってはくれなかった。そして、かわりに「俺も行かなきゃいけないと思っている。………だけど、あと少し待ってくれないか。あいつに会うために、俺も決めなきゃいけない事があるから………行くタイミングは俺に任せて欲しい。」と、言われたのだ。
それが結婚式の前の話しだったので、あれから2ヶ月以上も過ぎていた。
けれど、「遥斗に会いに行こう」と言った彼の表情はとても晴れやかだった。
泣いてしまった花霞の頭を、椋は優しく撫でてくれる。花霞が涙を拭いて彼を見上げると、椋は優しく微笑んだ。
そして、花霞がつくった白と緑のブーケをプレート型の墓石の上に置いた。そして、緋色の隣に座り片ひざを着いて、墓石に触れた。
そして、しばらくの間、椋は遥斗の事を見つめていた。さぁーっと風が吹く。彼の髪やジャケットなどが揺れている。それが、遥斗と彼の会話のように花霞には感じられた。