番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
★★★
「…………年上のいい大人がカッコ悪いな」
椋はボソリと呟きながら、ため息をつく。
隣にいる彼女には聞こえていないはずだ。
ソファで彼女を求めて抱きしめた後、花霞はウトウトとしてしまったのだ。事後の甘く気だるさを感じながら、椋はソファに横になる彼女を見つめる。
椋はソファの傍に座り込み、彼女の鎖骨の部分にある赤い跡に触れた。
それは先程自分がつけた、彼女への印だった。
花霞は自分の物だという証拠。
キスマークなどほとんどつけたことがなかったけれど、花霞の口から男の名前が出てきた事で、椋はつけたくなったのだ。
その男に見せつけてやりたい。
そんな独占欲丸出しの気持ちが込み上げてきたのだ。
「こんなところにつけられたって、迷惑だよな」
きっと花霞は怒るだろう。
「これじゃあ、仕事の時恥ずかしいよ」と言われるに決まっている。彼女に申し訳ない気持ちを感じ、椋はその跡を指で擦った。
もちろん、そんな事で赤い跡は消えるはずもない。
「ん…………」
「あ、ごめん………くすぐったかったかな」
「ううん………。私こそ、ウトウトしちゃって、ごめんね。………お腹空いたね」
寝起きのボーッとした表情のまま、柔らかく微笑む花霞を見て、椋は胸の奥がキュッとした。不意打ちの表情に、胸を高鳴らせるなんて、もう結婚してから大分経つが、彼女への愛しさは増すばかりだと感じてしまう。
「………花霞ちゃん、その………ごめん」
「ん?………どうしたの?」
「………ここ。キスマークつけちゃったんだ。どうしても着けたくなって、我慢出来なかった」
「え………」
花霞は気づいてなかったようで、椋が指差した場所を見つめた。けれど、彼女からは見えない箇所のようで、「ここにキスマークあるの?」と聞いてきた。椋が頷くと、花霞は椋が指差した場所に手を置いた。