番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
「椋さん………もしかして…………」
「あぁ………俺は警察に戻るよ」
「………っっ…………」
彼の幼い頃の夢。
遥斗との約束を2人で叶えた夢。
それを椋はまた叶える事にしたいのだ。
きっと、それを決めるまで遥斗に会うのを躊躇っていたのだろう。だがら、ここに来るまで時間がかかってしまったのかもしれない。
けれど、花霞は知っていた。
椋が警察に強い憧れを持っているのを。
結婚式で滝川や昔の同僚と話しをしている時の彼はとてもイキイキとしていたのだ。
だが、彼の中で警察に戻ることへの葛藤もあるはずだ。
大切な後輩を守れなかった不甲斐ない自分。
警察の真似事をして檜山を追っていた、復讐心に囚われていた自分。
1度夢を諦めてしまった自分。
きっとそんな想いが彼を悩ませたはずだ。
けれど、椋は新しい夢の形を決めたのだろう。
彼がまた前を向いてくれた事が嬉しくて、夢を追ってくれた事が幸せで、花霞はようやく止まった涙がまた溢れだした。
椋はそんな花霞を見て微笑み、抱き寄せてくれる。花霞は彼の腕に包まれながら嬉し涙を流した。
「良かった………よかったよ………椋さん………」
「心配かけて悪かった。また警察官として頑張っていくから、花霞ちゃんに支えてもらいたい」
「うん、もちろんだよ。………頑張ろう、ね」
「あぁ……………」
泉は花霞の頭を撫でながら、「頼りにしてる」と小さな声で言った。
そして、遥斗の墓石を見て、真剣な表情で語りかけた。
「だから、見守っててくれ。遥斗。おまえが目指した警察になるから」
「私も椋さんを守るから、遥斗さんは安心して見ていてくださいね」
「俺が花霞ちゃんを守るんだよ?」
「私だって椋さんを守りますっ!」
少し言い合いになるけれど、目が合うと自然に笑ってしまう。
「まぁ、見ててくれよ。俺達が幸せになるために頑張るところを」
椋と花霞は笑顔で遥斗の名前を見た。
すると、大きな風が吹き、白と緑のブーネがゆらゆらと揺れていた。