番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
体は震え、目は涙が浮かぶ。
冷静にならなければいけないはずなのに、そんな事は出来なかった。
煙のせいで、ゴホッゴボッと咳が出る、大声を出せば危険だとわかっていたけれど、椋は大きく息を吸った。
「まことーーーっっっ!!!」
反応はない。
そう思ったけれど…………小さな声が聞こえた気がした。
「誠?いるのか………?」
「せんぱ…………ここ、で…………」
椋のすぐ傍から声が聞こえた。
幸い他の爆発はなく、少しずつ煙が消えていく。声が聞こえた先を見つめ、手を伸ばすと壁にもたれ掛かって座り込む誠の姿が見えた。
顔は少し火傷をしており、全体は煤で覆われている。足には爆発時の爆風で飛ばされた何かが刺さっているようで血が出ていた。
「おいっ、大丈夫か?」
「すみません………勝手なことして。………体が動かないだけで………」
「わかった。後はしゃべるな」
椋は誠の肩を持ち、誠を抱えながら歩き始めた。
「………悪かった。」
「な、何で先輩が謝るんですか?」
「しゃべるなって言っただろ!」
「ぅ……………」
「…………お前が生きててよかった」
「……………」
椋の言葉を聞き、しばらくすると誠が鼻をすする音が聞こえ来た。
椋はホッとしながら、ゆっくりと煙がない広場へと歩いたら。
その時、椋の瞳から涙が一粒落ちたのを、椋も誠を気づく事はなかった。