番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
「おいっ!!何やってんだよっ!」
突然肩を抱き抱えられ、花霞の体は先ほどとは逆の方向へと向かう。
予想しなかった事に、花霞は驚き、体がふらついてしまう。けれど、花霞を助けた者が体を支えてくれて、転倒せずにすんだ。
花霞は、その相手を見上げた。
椋と同じ黒髪。けれど、長めのストレートヘアをまっすぐに切り揃えている。片耳からはシルバーのピアスが髪の間からのぞいている。
切れ長の綺麗な瞳は、花霞ではなく車にいる黒マスクの男を睨み付けていた。
「さっさっと失せろ………」
その男の口からは聞いたことがない、ドスの効いた声が発せられた。
「蛍………くん………?」
花霞は思わず別人じゃないかと思い、彼の名前を呼んだ。
すると、名前を呼ばれた蛍は花霞の方を向いて、いつもの優しい笑みを浮かべたのだった。