番外編 溺愛旦那様と甘くて危険な新婚生活を
「………悔しいけど、これは当たっている。………これは俺が復讐心を持った結果のものだ。………誠と、花霞ちゃんを巻き込んでしまったんだ。全て、俺のせいだ。」
椋はスマホが軋むほどに、強く握りしめて悔しさを滲ませながら、そう語った。
復讐は何も生まない。
昔、警察で働いていた椋にとってそんな事は痛いほどわかっていたはずだった。
けれど、大切な人を理不尽に亡くしてしまった事が、椋を苦しめた。
そして、その来るしさを復讐という形で何かに、誰かにぶつけないと気持ちを落ち着かせる事が出来なかったのだろう。
花霞が、当時の彼の気持ちを想像するだけでも、とても辛いのだ。実際に目の当たりにしていた彼は、どんなに苦しかったのだろう。それを思うだけで、花霞の心は締め付けられた。
「花霞ちゃん。怖い思いをさせてごめん。そして、黙っていてごめん…………花霞ちゃんは俺と一緒にいる人だから………大切な人だから狙われたんだ」
「………それ以上、謝ったら………私、怒ります」
「………え?」
花霞はそう言うと、キッとした強い視線で椋を見つめた。
花霞が怒っているのがわかり、椋は驚き戸惑っている表情だった。
そんな彼に構わず、花霞は椋に向かって手を伸ばし、そして両手で彼の頬にパチンッと軽く叩いた。もちろん、痛さを感じるほどではない。けれど、肌が鳴る音が車内に響く。
椋は、その音と肌の刺激にビクッと体を動かした。