若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
それから十分ほどしただろうか、寝返りを繰り返していた佳織は、枕に沈めていた顔を上に向けた。

歴史を感じる天井の太い梁を見つめる。

すっかり冴えてしまった頭には、再び眠気が訪れる様子もない。
寝たのが恐らく三時頃だとして、六時間はぐっすりと寝たことになる。二日酔いはまだ辛いが、考えてみれば、せっかく絵画のように美しいシャトーに来ているのだ。

気持ちを新たにして、佳織はベッドから出ることにした。

シャワーを浴びて、着替えた頃には薬も効いてきたのか。頭痛の虫は大人しくなっていた。窓を開けると、天気はいいし風は爽やかだ。

部屋で燻っていてももったいない。
散歩でもしようと思いながら庭に出ると、木陰のリクライニングチェア―に体を預け、雑誌を読んでいる矢神が見えた。

よく覚えていないが、酔って散々絡んだことは間違いない。
――とりあえず謝らないと。

顔を合わせるのは気が重いが、そうも言ってはいられない。
恥ずかしさをごまかすように、帽子を目深に被り直した佳織は、矢神の元へ歩いて行った。
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