若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
1.秘密の契約
人生には運命の分岐点がある。

ある日を境にして、大きく上を向くこともあれば、
階段を転げ落ちるように下っていくこともある。

花森向葵(はなもり ひまり)二十歳。

都内の大学に通う彼女の場合は、人生最大の分岐点が
夏休みの一週間前に訪れた。

大学二年生といえば、箸が転んでもおかしい年頃である。
ふたりの友人と連れ立って校門から出てきた向葵もまた、なにがおかしいのかアハハと笑い転げながら立ち止まった。

「あー、おもしろかった。じゃあねー」
「ふたりはこれからバイト?」

「そう、ミクはデート?」
「うん」

「彼と来てくれたらデザートサービスするよ」
「サンキュー」

行き先の違うミクは、向葵と夏梨(かりん)のふたりをおいて「またね」と走っていった。
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