若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
この食えない男に言ったところで、切ない女子の想いなどわからないだろう。そう結論付けて視線を窓へと泳がせた。

――どうせ茶化されるだけに違いない。

「それにしては、随分と浮かない顔をして歩いていましたが」

今日こそはキレるまいと心に誓っていたが、そんな誓いは瞬時に飛び去った。
「矢神さん、あなた変態ですね、そうなんですね。あれでしょう? どこかでひっそりと人間観察してクスクスにやにやしてるんでしょう?」

プッと噴き出した矢神は、アハハと笑う。

「クライアントに変態とは」

「あっ。……いえ、あの」

「あなたを待つ間、その窓から外を見ていたんです。そうしたら恐ろしく憂鬱そうにため息をつきながら、あなたが歩いてきたんですよ。まぁ人間観察が嫌いなわけではないですが、どうしても職務上ね」
< 160 / 314 >

この作品をシェア

pagetop