若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
4.疼く心と残酷な秘密
高層階の窓から見下ろす夕暮れの街は、ギラギラと容赦ない夏の西日を浴びている。
八月も下旬になり、陽が傾く時間は早くなりつつあるが、秋の気配はチラリとも姿を見せない。一刻でも早く、過ごしやすい秋にならないものかと、うんざりしながらため息をつく。
月井夕翔は、東京のこのジメジメとした夏が嫌いだった。
「どうぞ」という声に振り返った。
友人の西園寺洸がテーブルの上にコーヒーカップを置いている。
ここは夕翔の友人、西園寺洸の執務室。
西園寺洸はこの部屋で、好きな時に好きなように気に入ったコーヒーを飲めるようコーヒーメーカーを置いている。そしてこの執務室に通すごく親しい客に対して、そのコーヒーを振舞うことを信条としているらしい。
今日も誰に頼むことなく、彼自身が用意する。
夕翔が座ったのを見届けると、洸もまた応接セットのフカフカのソファーに腰を下ろし、早速コーヒーを飲みはじめた。