若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
何しろこの友人は幼いころから言葉数が少なく、酷い時は『えっと』と言っただけで完結してしまうほどである。
流石に年齢と共に言うべきことは口に出すようにはなったし、社会人になっては卒のない会話をこなしているが、話している相手が友人だと気を抜くらしい。

長い付き合いであるので、大概の事は想像できるが、さすがに今の話は理解の範疇を超えていた。

なにしろ洸は、夕翔と向葵の結婚が契約結婚であることすら知らないのだ。

ブルゴーニュのシャトーでの結婚式を思い浮かべたが、洸の目にも恐らく他の友人たちの目にも、ふたりは愛し合う新婚カップルとして映っているのである。

夕翔がぽつりぽつりと話はじめた。
「でも、そんなつもりはなかったんだ。二年間の契約だったから」

「二年間?」

「そう」

「あのね、夕翔。悪いんだけど順を追って話をしてくれる?」
とは言ったものの、もはやお手上げだと思った。
< 165 / 314 >

この作品をシェア

pagetop