若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
彼はメガネをかけている。
目元がよくわからないのでしっかりとした自信があるわけではないが、
通った鼻筋とシャープな顎のラインとスラリとした立ち姿が、記憶の隅に残っているように思うのだ。

先週彼を見た時も、帰りを見送りながらそう思った。

「どう? 何か思い出した? あの人のこと」

手の空いた夏梨がそっと耳打ちする。

「うーん。この辺まで、でてるんだけどね」

ほんの喉元まで、記憶の断片が顔を出している。

あともうちょっと。
だけどそのちょっとが、浮かんでこない。

魚の小骨が刺さったように気になるが、何としても思い出せなかった。
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