若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

実際、夕翔と出会う前から向葵は明るく元気な女子大生だった。
多くのことを我慢したのかもしれないが、それを上回る幸せを見つけて、彼女は毎日を過ごしたのだろう。いまの彼女を見ていればそれがわかる。あの子は弱くはない。

それは柊子にも言えることだ――。

カサリと音を立てながら夕翔は書類をめくる。
断片的に、片方ではそんなことを考えながら、手は休めなかった。

一時間ほど意見を交わしてから、矢神は席を立った。
「では、失礼します」

ひとり執務室に残った夕翔は、黙々と仕事をこなし、予定通り六時には帰り支度を整えた。

――さて、今日のメニューはなんだろう。
向葵が作った料理を食べるのは、最近の楽しみのひとつだ。
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