若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
仮に同一人物が、ウォーターサーバーのアルバイトの後に、警備員に転職したとしても不思議はないかもしれない。

でも、それからほんの数か月後に、高収入らしいビジネスマンに変身するには無理があるように思えた。

となると、やはり他人の空似なのだろうか。


やがて閉店時間を迎え、掃除を済ませてボチボチと帰り支度をはじめたふたりに、店長が労いの言葉をかけてきた。

「お疲れー。なんだか今日も忙しかったなぁ、もうちょっと暇でいいのに」

「ええ? なんですかそのやる気のない発言」
「繁盛でいいことじゃないですか」

向葵たちの突っ込みに、店長はため息をつく。

「ほどほどでいいんだよ。待っている客がいたら客のほうだって落ち着かないだろう? ここのオーナーは、ほぼ趣味でやってるようなもんだからさ、利益にはうるさくないんだ」

「でも、お給料は増えるんじゃないですか? 儲かれば」

「増やしてどうするよ、俺なんかこの店に立つ以外の趣味ねぇし。そこそこでいいんだよ、そこそこで」
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