若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
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「え? それじゃ、彼女は身代わり?」
大きく目を見開いた佳織は、怯えたように口元に手をあてた。
出張する夕翔と営業部長を駅で見送り、矢神が向かったのはソニオ弁護士事務所だった。
「わかりません。単なる私の推測に過ぎませんから」
『二十歳の頃の柊子を思い出したよ。似てるよな? お前の奥さん』
ホテルのロビーで真行寺が言ったセリフ。耳に届いたこの言葉が鍵となって、記憶の扉が開いた。
――そうか、あの日は。
たとえ酒の席でも、いつも冷静な上司が我を失う程酒に酔ったことがあったのは、半年前。
間違いない。
あれは真行寺崇文の結婚式があった日の夜だ。