若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
女性として、泣くのは目に見えているのに――。
気がつくと佳織の頬を涙が伝っていた。
コンコン
慌てて涙を拭った。
「こんにちは」
ドアから現れたのは、向葵だった。
「ああ、いらっしゃい」
「ごめんなさいね、なんかのアレルギーみたいでちょっと目と鼻が」
明るい向葵の笑顔が辛くて、とても直視はできない。
「あ、もしかして秋の花粉症ですか」
「そうなのかしら、そういえば、もう九月ね」
「そうなんですよね。あ、私、そろそろ元のアパートに帰ろうと思っています」
「え? そうなの?」
「もともとそのつもりだったので。管理人さんにも泊まり込みのバイトって言ってあるので帰らないと心配されちゃうし」
――もしかして、この子は気づいている?
女の勘というものだろうか。佳織には、前回会った時には感じなかった向葵の哀しさが見えた。
そして、それが見えても、なにも言えなかった。
「そっか」
「夏休みは終わりです」
そう言った時、笑顔の裏で泣いているように見えたのは気のせいなのか。
――帰ること、月井さんには伝えたの?
その一言が、最後まで、佳織は言い出せなかった。
気がつくと佳織の頬を涙が伝っていた。
コンコン
慌てて涙を拭った。
「こんにちは」
ドアから現れたのは、向葵だった。
「ああ、いらっしゃい」
「ごめんなさいね、なんかのアレルギーみたいでちょっと目と鼻が」
明るい向葵の笑顔が辛くて、とても直視はできない。
「あ、もしかして秋の花粉症ですか」
「そうなのかしら、そういえば、もう九月ね」
「そうなんですよね。あ、私、そろそろ元のアパートに帰ろうと思っています」
「え? そうなの?」
「もともとそのつもりだったので。管理人さんにも泊まり込みのバイトって言ってあるので帰らないと心配されちゃうし」
――もしかして、この子は気づいている?
女の勘というものだろうか。佳織には、前回会った時には感じなかった向葵の哀しさが見えた。
そして、それが見えても、なにも言えなかった。
「そっか」
「夏休みは終わりです」
そう言った時、笑顔の裏で泣いているように見えたのは気のせいなのか。
――帰ること、月井さんには伝えたの?
その一言が、最後まで、佳織は言い出せなかった。