若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
フランス語のレッスンが終わった帰り道。
不安に襲われた向葵は、ふいに立ち止まった。

夕翔からの連絡があっても、バッグの中じゃ気づかないかもしれない。
それは困る。
バッグからスマートホンを取り出して新着を確認してから、手に持つとようやく安心できた。

すると――。

「あれ? 向葵?」
聞き覚えのある声に振り替えると、よく知った顔がある。

「健太?」

健太(けんた)は、向葵の幼馴染だ。

母とふたりで暮らしていたアパートの、隣の家の男の子でふたりは同い年である。向葵が大学生になり母が再婚してアパートを引き払うまで、小学校一年生の時から高校までずっと同じ学校に通っていた。

「久しぶり」
「久しぶり~じゃねえよ、お前全然連絡つかねぇし」

「あっ!」
慌ててスマートホンを開く。

SNSを見ると、公式アカウントに紛れた健太の通知が十件以上。

『向葵、夏休みだろ?遊ぼうぜ』
『おーい、忙しいのか?』
激怒のスタンプや、泣きのスタンプ。

最後の書き込みは昨日。

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