若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)
間違いなかった。矢神だ。

そして、まっすぐ出口に向かい、今まさに扉から外に出た、男性は……。


「どうした? 知り合いか?」

「え、あ、あぁちょっと」

――夕翔さん。どうしてここに?

私に気づいた?

先にいたにしても、後から来たとしてもこの奥にいたとすれば、気づいた可能性は大きい。
でも、彼は声をかけてはこなかった。

いつ帰ってきたんだろう?
夕べのメッセージではまだ帰らないと書いてあったけれど、予定がかわったのだろうか?

それから健太とどんな話をしたのか、気が動転している向葵には記憶がない。向葵は、ただただスマートホンを握りしめた。

それでもどうしてもいたたまれなくて席を立った。

「あの、ごめんね、健太、私ちょっと用事を思い出して」

慌てて外に出た時は、もう彼の姿はなかった。



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