若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)


***



「矢神、あれはなんだ」

そう問い詰められて矢神は困っただろう。
彼にもわかるはずがない。

「え? ――あれ? 向葵さん?」

慌てて外を見渡し、向葵を見つけた矢神は、「えーーっと」と返事に詰まった。

「一緒にいるあの男は誰だ?」

向葵は同じ年くらいの男と一緒にいた。
以前身辺調査もともと彼女にはボーイフレンドもいないとあったが、そういえば、と思い当たったとき。

「……もしかすると幼馴染みの」
同じところにいきついた矢神が、そう答えた。

「車を止めろ」

「え? ですが常務」

「打ち合わせは予定より三十分早く終わった。コーヒーを飲む三十分の余裕はあるよな?」

「――え、ええ、まあ」

運転手が車を寄せる。
すかさず車から下りると、慌てて矢神もついてきた。

「常務、向葵さんは結婚のことは隠したいと」
「わかっている」

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