若奥さまと、秘密のダーリン +ep2(7/26)

そこには、向葵の笑顔と彼女を少し見下ろす自分がいた。


――向葵。

昨夜からのことをつらつらと思い出しながら、夕翔は向葵が幼馴染の男と入っていったカフェに入った。

扉を開けて店内を見渡すと、彼女の姿はすぐに見つかった。

「いらっしゃいませ」
「なるべく奥を」と告げる。

彼女の席は店の中央。案内された席に行くには彼女が座っている席の隣を通らなければならない。

その脇を通り過ぎながら、目が合うことがないようまっすぐ前を見て進む。

すれ違いざまに聞こえた幼馴染の声。

『俺さ、真面目に言ってるんだぜ。お前ほんと鈍いからな、俺がずっと何かにつけてアプローチをしていることお前全然わかっていないよな』

席について、コーヒーを注文する。

矢神の席は彼女たちに背中を向けているのでわからない。